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天使とヴェロチスタ-黒澤S15編-

あらすじ・・・・関東一帯のみならず日本中に勢力を広げてることで有名な「黒澤会」の会長の孫と豊の関係とは?

	・『黒澤編:会長のお孫さん』


『第四章:ブルッちゃったよ』

『大黒PA』

「あ〜今夜はつまらねーなー・・・虎彦のヤロー、連絡無視しやがって・・・」

 大黒PAの駐車場で一人悪態をつき、ロードスターの横でアイスを喰らう豊
ここ最近、2000GTで走り回る虎彦にドンドン置いて行かれ、ちょっとしたスランプ
そんなモチベーションが下がってるときでも、ついついココへきてしまう。
NB型となり汎用性が増したロードスター、C1での走りも冴えている方
しかし、隣に2000GTを乗り回すトンデモ野郎がいると
いかんともしがたいぐらい自分が陰って見える。
幾分かチューニングし、コツコツコツ仕上げて、180psを絞り出し
軽量化もやれるだけやった。
なのに、自分が色あせて見えるこの虚しさ

「はぁ〜・・・180psも絞り出して色あせて感じるなんて・・・」

 ため息交じりにアイスを食べきり、ゴミを捨てに一旦駐車場から離れ
考え事をしながら俯いて戻ってくると・・・

「うっ・・・!」

ロードスターのすぐ目の前で、思わず硬直する豊

(なんで、なんで、なんであんな如何にも怖そうなヤーさんが
ベンツの横に立って、まわり警戒してんだよ!
ロードスターにのれねーじゃんか!どいてくれよ!でもコエー!!!
ってか、こっちメチャクチャ見てる―――ッ!)

 走馬灯レベルに心境のダムが瞬時に決壊する豊、がなんだか動きづらい
変に動けば・・・・
自分でイロイロ考えているうちに、ただ突っ立ているように見える豊

「おい、そこのあんちゃんよ、なんか用かい?」

「い、いえ、カッコイイメルセデスだな・・・って、あは・・あはははは・・・」

ずっと豊を警戒してみるヤクザにドスが効いた尋問をされ、柄にもなく弁解の挨拶をする豊

「んだとぉ?テメー何がいいてーんだよ?」

「ひゃぁっ!なんでも!なんでもしますから!命だけは!」

「やめねーかタツ、光利さんの前で変なマネすんるんじゃねぇ」

「アニキ!こいつ喧嘩売ってきますぜ!」

「あばばばばばばばば・・・・」

腰が抜けて、震える豊、ヤクザに詰め寄られ絶体絶命

 すると、メルセデスの後部座席から、豊と同じくらいの青年が出てくるなり
なにを思ったか、豊にススーッと近寄る

「もしかして豊?」

「へ?」

 半べそで子犬のように震える豊の顔を覗き込みながら質問する
ヤクザ二人と行動してた青年
豊も、その声とどこか見たことある顔に、シナプスが急ピッチで
バシバシッと繋がっていく。

「ミ・・ミッツ?」

「そーだよ!やっぱり豊か!」

「ミッツ!?ミッツなのか!?」

「うわー!懐かしいな!変わらねなーッ!」

「ミッツも変わらねーよぉ!」

先刻までの恐怖はどこへやら、数十年ぶりの再会に歓喜する二人

「なんでこんなとこにいるんだよー」

「なんでって、ほら」

横を指差し、ロードスターを黙って紹介する。

「え?これ豊の?」

「おうよ!俺のスイートベイビー!」

「NB8Cかー!いいなぁー」

「ミッツの方が車好きだったよなー」

「今も好きだよ、寝ても覚めても車、車」

「今、なに乗ってるの?」

「いや、この春からコッチに戻ってきて、じいちゃんがS15を用意してくれるって」

「S15!?」

「大学に通うのに、車がいるって言ったら」



『じいちゃん、今嬉しいからなんでも用意してやる』



「って言うんだよ、BMW?ベンツ?アウディ?なにがいい?とか聞いてくるわけ」

「ミッツん家ってそんなハブりいいの?」

「いや、父さんと母さんは普通なんだけど・・・・ほら・・・」

後ろのヤクザを見るように視線を送り

「なっ!」

「すべてつながったよ・・・・」

「光利さん、そろそろお時間が」

「あー悪い、じいちゃんに友達の車で帰るって伝えるから、電話かけて」

「へ、へい」

 豊が見ている目の前で、テキパキと連絡の要件を済ませ
親しげに「会長」であろうおじいちゃんと電話をする光利
彼は、関東一帯で名を知らぬものはいない「黒澤会」会長
黒澤龍之介の一人孫、大学に通う関係で用意してもらったS15を駆る
状態の良いS15を自分でイジりながら乗っている。
今日は、所用で福岡に朝早く向い、とんぼ帰りしてきたばかり

「光利さん」

「ん?」

「あまり、遅くならずに、お気をつけて」

「あぁ、わかってるよ」

「さ、松ヶ丘まで頼むよ」

「お、おう」

 光利を見送るヤクザに鋭い眼光を貰いつつも、光利を心配していた
ヤクザの一人が、豊に小さく会釈をする。

(ふぅー怖かった・・・・)

 ロードスターに乗り込むと、陽気にレッツゴーと叫ぶ光利を横に
大黒PAから新山下方面へ湾岸を下る。
メカチューンらしい、爽快感あるエグゾーストを携え、ベイブリッジを駆け抜ける。
130km/hほどで、キープライト。
トラックや高速バスの類いを尻目に、ロードスターは軽快に走リ抜ける。

ファァァァァァァァァァ・・・・・・

「む?」

「どうしたんだ?豊」

「この音は・・・・」

バックミラーにチラチラ目線を配る豊かに、光利も気になり後ろを向く。

「おい!なんか凄いの来てるぞ!」

「あぁ・・あれ、仲間」

「仲間ッ!?」

 あっという間に豊のロードスターに追いつくと、真横に並び
「よっす」という感じで、虎彦が並走する。

「2000GT!」

「そーなんだよ、とんでもねーよなぁー」

「なにそれ、普通なものを見るようなカンジ!」

「まぁ・・・普通なんだよ」

「2000GTがこんな速いなんてフツーじゃねー!」

「なんなら、ちょいと見せてもらうか」

 豊が、窓越しにいつもの「走ろうぜ」サインを送る。
ロードスターのアクセルを全開に開け、160km/hオーバーへ持って行く。
A突堤の上を走る湾岸線から、本牧JCTを右へそれていく。

「このロードスターはこーいう速度域は得意じゃないんだよ」

「やっぱし、ホイールベース短いって怖いもん?」

「そりゃー怖いよー、200km/hまで引っ張るとC1向けの足じゃフラフラだよ」

一車線の緩い右コーナーをスライドする寸前のおいしい曲がり方でクリアする。

「2000GT速くねーか!?」

「だろー、嫌になるよー、軽いしパワーはあるしで」

 当然のことを説明する豊に対してより、背後で遠い過去に
前線を退き、トヨタの旗艦としての役目を終えたモデルが
今現在に、各社の現役旗艦すらも上回るスピードで走っている。
その2000GTに驚きは隠せない。
なによりも、先ほどJZA80と目の前をかすめっていたそのものである。
寝起きの眠気眼で、ぼやーっと見つめていた白い怪物は
まさに本当に怪物だったわけである。

 新山下JCTも右にそれ、ブレーキングでスピードをそぎ落とし、コークスクリュー並の
落下する右コーナーを、結構な速度で入っていく、当然2000GTも当たり前の様についてくる。

 トンネルに入ると、2000GTがフォーミュラーサウンドをトンネル中に
これでもかというほど反響させる。




正直、騒音レベルだ。




「だぁぁぁぁうるせー!!!耳裂ける!」

 ステアを片手で握りながら、豊は耳を片方抑える。
よこで、光利もすっかり顔をゆがめている。

(うぉぉ・・・・・やばいだろーよこれー・・・・)

ファァァァァ―――ファヴァッヴォォォォ―――

「お、エグゾーストチェンジしたな」

「そんなハイテク装備ついてんのかよ」

 トンネル内に充満していたフォーミュラーサウンドが消え
普通の高回転V8らしい、落ち着いたエンジンサウンドに落ち着く



 みなとみらいの地下を並ではない速度で駆け抜ける。
大きくゆるいコーナーも、一般車を避けるために不規則なラインをなぞり
しばらくは右車線を厳守に飛ばす。
昼ならば混み合い、なかなか動かない横羽線も、これだけの時間帯ならば
そうは混まない。
トンネルからスーッと地上に引きあげられ、金港JCTはもう目前

「金港JCTを三ツ沢線方面に行ってな」

「そっか、松ヶ丘は三ツ沢に行くんだったけ」

 虎彦の2000GTにパッシングで合図すると、ロードスターは左にレーンチェンジし
速度を一般ペースに紛れ込ませる。

「ん?そっちいくのか」

 ロードスターの動きを確認すると、単独ペースへとチャンネルを変え
虎彦はもう少し、2000GTのアクセルを踏み足し、神奈川1号線を登っていく
外にも出たので、エクゾーストシステムも本来のスタンダートに戻し
シティモードの制約から解かれる。
金港JCTから二手に分かれていく2000GTを光利はジッと見つめる。

「あの2000GT、なんで古く感じないんだろうな」

「そうか?」

ロードスターの進路が左へ進み、2000GTが視界からいなくなる。

「普通は2000GTなんて見たら、ふるーいとか口走っちゃうけどさ
あの2000GTはなんか不思議だよ」

「まぁーあ、エンジンだけは世界の最先端が詰まってるけどな」

 軽く笑いながら三ツ沢へ車を進める豊と光利
光利はなにか、うらやましさと同時に、同い年の虎彦が何段も違う世界で
生き生きと暮らしているのを目の当たりにして
どこか、ウズウズしたもどかしい気持ちを覚える。
自分もその舞台へ立ちたい、走りたい、と、そう願う利光は
もう首都高という異質な空間に惚れこみ始めていた。

「よし!豊!明後日は暇!?」

「ん?あぁ暇だよ」

「さっそくC1を走ろう!」

「はぁ?」

「いいじゃんいいじゃん、シルビアで来るからさ」

「・・・・じゃぁ、どこで待ち合わせる?」

「レイブリの上で待っててよ」

「レイブリィ!?そんな辺鄙な待ち合わせ場所初めてだぞ・・・」

「つーわけだからさ、明後日な」

「シルビアはスペックRだっけ?」

「もちろん」

「トホホ・・・・」

「おっおい!西口ランプで降りてくれよ!」

「うぉっと!」

危なげに急に左へ飛び、西口ランプから異質な舞台を後にする。

「松ヶ丘は右に行けばスグ」

「そういやぁミッツのじいちゃん家って」

「さっきも見たとおりヤクザだよ」

「やっぱりか・・・」

「悪かったな、さっきはウチのヤツがガン飛ばしちゃって」

「まじでブルっちゃったよ・・・」

「じいちゃんは優しいから、大丈夫だよ」

 目指すは松ヶ丘の黒澤邸宅、豊はすっかりおじいちゃんは優しいよ
の一言に、それとなく送って終わりになると思っていたようであるが
そうは問屋が卸さないのが、世の中である。





『第五章:ナチュラリーアスピレーションっていうの?』

 深夜の住宅街をソロリソロリと走るロードスター
右へ左へ、間髪入れず現れる狭い路地を光利の指示通りに抜けると
目の前に、黒服の集団が列をなしている。

「いいっ!?」

 思わずブレーキを踏み、リトラを閉じる豊
横では光利が疑問がっている。

「なんでとまんの?すぐそこだよ」

「いやー・・・あれ全部ミッツんとこの?」

「そうだよ、ウチの組員達」

「あはははは・・・・・」

 申し訳なさそうに、クラッチが焦げるのも忘れそうなくらい
トロトロの怯えるように黒澤邸宅前に止まるロードスター
恐る恐る見上げると、列をなした組員達の真ん中に威厳のある
人物が立っている。

「じいちゃん、ただいま」

 ロードスターからなんの躊躇もなく降りる光利
車の中で、いつ発進して逃げようか考える豊
豊だけ様々なシュミレーションが交錯する。

「おぉ!よく帰ってきたな光利!」

「さすがに福岡からは疲れたよじいちゃん」

「む、そちらの運転手さんは?」

(ギクッ!)

 別段罪は犯していないが、なぜこういう目立ちたくない時というのは
必要以上に周りから目立ってしまうのか
まるで授業参観で分からない問題の時に限って名指しされるように

「あぁ、友達の豊、大黒で久々に再会して、ココまで送ってもらったんだ」

「おぉ、そうか!なら、一緒にあがって飯でも食べていただくといい」

「じいちゃん客人好きだもんねー」

「光利のご友人というからには礼もせんといかんからな」

(アルティメットスーパーミラクルギクギクッ!)

「だってよ豊、あがってってよ」

「いやははは・・・いいよ・・・もう遅いし申し訳ないよ・・・・」

必死の抵抗をするも、すでに背後からチェックメートの手が忍び寄る

「おい、だれかこの車を駐車場に移動してさしあげるんだ」

会長直々のお達し、すぐに組員が運転席側に来る。

「さ、お車を降りてくだせえ」

「あばばばばばばばばば」

 言われるがままに車を降ろされると、ロードスターは目と鼻の先の
駐車場にピタッと駐車されてしまう
とても近いのに、まるで万里の長城の先までロードスターが行ってしまったような気分

「よくきんなしたな、お名前は?」

「ささ、桜井豊で・・・す。」

 そーっと見上げると、優しいとは程遠い、強面の中の強面
まさしくこういった世界を牛耳るにふさわしい面構え

(ひぃぃぃぃ!全然優しくなさそー・・・・あばばばばばばば・・・・)

 ここから更に、豊にとっての最大最強の恐怖、否、強大なものに
囲まれる恐怖というものを味わい続けることになる。








『3日後、台場11号線レインボーブリッヂ上路側帯』

「あぁ・・・・おとといは酷い目にあった・・・・」

 酒は無理やり飲まされるわ、怖い兄ちゃんに囲まれっぱなし
しまいには宿泊してけ勅令
生きた心地がしなかったおととい、晴れてココにいると
自由とはこんなにもありがたいものだったのかと噛みしめる豊
無論、二日酔いだけは避けることに成功した。

「にしても・・・そろそろだな・・・」

ッパッパ!

「お?」

 ロードスターの背後に一台の車影
バックミラー越しに覗くと、光利の姿が確認できる。

「よっしゃ、走りますか」

 ハザードを消して、本線に合流
窓から手で合図し、ついてこいとメッセージを付ける。
軽く流すように銀座方面へ2台は走り出す、はたから見れば
元気のいい走り屋コゾー、まわりからはそんな程度の見解、
だが、光利だけは少し、豊とは違う予定を描いて走り出していた。






『大井PA、湾岸線東行き』

「おーっし!今日も一っ走り行くかー!」

 呑気に大井PAで準備運動にいそしむ時本恵二
この男、田んぼのど真ん中で2000GTの片鱗を目撃した男だ。

「アニキー!早く行こうよー!」

 助手席からは黄色い声が聞こえ
少々不満気が混ざったような声でもある。

「わーったわーった」

「ったく、Z33じゃダメってーから助手席で我慢してんのに」

「お前に湾岸はまだ早い」

「早かねーよ!」

「まぁまぁ、ほらほら、湾岸線に合流したぞー」

 横の妹にブーブー言われながらも、恵二の駆る黒いR32が
湾岸線の流れに混ざっていく
500psのGT-Rは湾岸線をグイ グイ加速していく
耐久性とタレにくさに焦点を絞った恵二のR32は
基本的な「速く走る」という要件を満たしている。

「ねッ!アニキ、後ろからなんか来るよ!」

「速いかー?」

興奮する妹:月菜とは裏腹に、興味のなさそうな返事を返す恵二

「速い速い!バトルだよ!バトル!」

「今日はそんな気分じゃねーの」

「えっ、ちょ!すごいよ!」

「落ち着け・・って―――・・・・」

 月菜が興奮するのも無理はなかった、自らの横を
天使の忘れものが通過する瞬間、時間が止まる。
背後にはどこかのデモカーだろうか、R34が2000GTを追っている。

「2000・・・・GT・・・・」

「アニキっ!」

 次の瞬間にはフルスロットルに移行
一気に高揚し、先ほどまでの冷めた気分は一気に一蹴され
2000GTを一心に追いかけ始める。
思考する暇すら与えられない、180km/hで走るR32を
容易に超えていく2000GT、アクセルを目いっぱいに踏み倒しても足りない
有名どころのデモカーさえも苦しそうだ。

「アニキっ!離れてくよ!」

「速いッ・・!」

「あのR34、かなり有名どころじゃん!」

「いくら有名でも2000GTにはどうかな!」

 東京港トンネルを潜り抜けると2000GTが減速、左へ寄るのを確認すると
後を追うように恵二も同じルートに切り替える。
有明JCTを台場11号線方向へ、新環状は恵二の得意エリアでもある。

「よーっし、右回りだな。俺のホームコース!」

「追いつけそう!?」

「追いつくんだ・・・よッ!」

 限られた速度域までを目指すならば、恵二のR32は一級品
上の霞む湾岸トライよりは分がある。
追いつく。その言葉通り、レインボーブリッヂにさしかかってからは2000GTとの
距離は開いていない、むしろ2000GTを追いかけているR34をパスせんとばかりに
その手慣れたライン取りは環状ランカーを伊達にやっていない証

「さー次はどっちへいくつもりだー?」

 外か内か、どちらへ転んでも、500ps級のRは首都高では絶対的な速さを持っている。
恵二の目の前で2000GTは浜崎橋JCTを内回りへ、すでに恵二のR32を捕捉し
勝負に応えるように、離さずつかれずの距離を保つ

「ちょ・・・!アニキっ!速いって!」

「ココを走るRの助手席はそんなもんだ!」

 C1を内回りへ、右にルートを選択した虎彦に続き、阿吽のタイミングで
恵二も虎彦の後へ続く、R34は湾岸からいきなりのC1で、恵二に容易くパスされてしまう
そして、汐留のS字の先へ続くトンネルの中にはC1クルーズをする豊と光利。

 汐留のS字をアウトからえぐるように入り、切り返す右コーナーへは
オーバーじゃないか?というくらいの減速をし、インべたをを守る。
公道でのアウト・イン・アウトはリスクがあまりに高すぎ
彼らは、車線をなぞらえたラインをよくとる。
すなわち、一般車で走るラインをより、高速化させていく

 何度後ろから見ても、2000GTの後ろ姿は、気分の高揚を隠せない
追えば追うほど、その先に共に行きたくなる。
そして、2000GTの前にでる。それを自然に意識させられる。
2000GTの異質なパッケージングは、今現在の最高のチューンを
施したRさえ、容易く叩き斬ってしまわんばかりの速さ

「さすが、有名どころだな!R34だけに速い!」

「アニキっ!あのショップに勝ったらお客さん来るね!」

「そんなことどーでもいいわー!2000GTを抜かすのが今は一番事項!」

 新旧Rに旧世代のフラッグシップ、異様な光景の三つ巴が繰り広げられ
トンネルにかなりのエグゾースト音量がこもる
周りの車は戦々恐々と飛びのき、彼らが違反を犯していることは
だれの目に見ても明らかだが、その速さと迫力に見とれる者が
居るのも確かで、ギャラリーをしにC1を回ってる
物見遊山の連中にはすこぶる評判がいい

 一個目のS字を、2000GTがすり抜け、恵二が続く、遅れてR34
R34には目に見えて疲弊してるのが解る。
たぶん、大黒以前から2000GTとのフルスロットルバトルを演じてきたのだろう
ころ合いを見計らったようにハザードを炊くと、京橋ランプから
降りていく、これもまたここが自由な証でもある。

「降りたか!」

「うん!、降りた!」

 二つ目のS字プラス今度は狭い中央分離壁もパス、宝町のストレートで
ついに2000GTが、豊と光利に遭遇し
S字を終えた直後にペースが下がり、恵二も不思議に思いながらも
少し遠巻きに2000GTを観察する。
S15とNB8Cの背後に付くと、しばらく追走すると
S15が突然フルスロットルで、C1内回りへ走りだすと、NB8Cも続き、2000GTも続く

「なるほど!仲間か!」

「でも随分クラス違わない?」

「関係ないんだよ、そんなの」

R32も後を追って付いていく、C1はまだまだ彼らの時間







「今日の目的はお前なんだ!」

 神田ランプに差し掛かると、S15が突然、元気よく飛ばし始める。
光利の意図するところは2000GTとの全開走行
ターボパワーで豊のロードスターは引き離せても
2000GTと、その背後の見知らぬ黒いR32は離されずに付いてくる。

「そぉい!来い!来い!」

 S15のスピードに引っ張られるように、2000GTもペースをあげてくる。
前方に集中力を割きたいが、背後の2000GTが気になってしょうがない
事前にインターネットであさり尽くした「首都高の2000GT」
情報は様々で、巨大匿名掲示板から小さなSNSコミュニティーまで
白い2000GTはレプリカ説や存在自体作り物説
金持ちの道楽説にお前らハッピーすぎる、というツッコミも含めて
すべての真実や現状は、尾ひれをつけて飛び回り
確証は薄いものとされ、この2000GTのすべてを知る者は全くいない。

「かっこよすぎる、首都高の2000GT・・・・!」

 光利の前で奇跡の忘れものは、憶測や仮説を吹き飛ばし、ありのままを見せてくれる
憧れを抱かせ、競争心を駆り立てる。
勝てないのは解っていても、共に走っているこの瞬間、瞬間に武者震いを禁じえない

「もう霞ヶ関かよ、ペースが早すぎる」

 トンネルを抜けて、赤坂、脇から2000GTとR32が圧倒的なパワーで抜けていく
霞ヶ関トンネルから抜けた先はちょっとしたスポット、どこまでアクセルを
開けていけるか、そんなことを試せるスポットで
虎彦はここを通る時は、ついついアクセルを踏み足して行ってしまう。
古めかしい2000GTが、霞ヶ関トンネル出口の左コーナーを、地面に吸いついたように
ギャップを舐めながらクリアしていく、曲がるという行為の到達点のような気さえしてくる。

「R32も速ぇーな、コッチだってアクセルフルスロだってのに
しかも助手席にオンナ付き、豪華すぎるじゃんか」

 赤坂の直線で一気に差が開く、あっという間に何十メートルも先を行き
その先の左コーナーへ続く二台、光利と豊は完全に蚊帳の外だ。

「よせつけることすらしてくれねーな・・・」

 だが、光利にはまだ2000GTを追う秘策が有る。
あの調子だと、二台は湾岸線に移行する。
当然だが、有明からより辰巳から湾岸に合流するだろうと
そう踏んだ光利は浜崎橋JCTを右にそれ、レイブリルートで
湾岸線へ先回り策を実行することを考えていた。

「くー!急ぐぞ!」

 S15が東京タワーの見える、芝公園のS字をクリアするころ、先行二台はいずこ
やや遅れて、豊のロードスターが続く






「アニキっ!このまま湾岸っ?」

「あぁ!そうだ!」

 浜崎橋のコークスクリューを思わせるような下る左コーナーをクリアし
2000GTから片時も離れず続く、二度目のC1内回り
今度は、ここから新環状を経て湾岸へ、車両に異常ナシ

「さっきより、格段にペースが違うよっ!」

「・・・ッ!」

 狭い大都会に縫わせたC1を2000GTは狂気の勢いですり抜けていく
その動き、いなし、呼吸、合わせるのに恐怖さえ伴うスピード
新環状までなんとか持たせなければならない
だが、2000GTはいたって余裕なまでにすべてをこなす。
こんなことがありえていいのか、あまりにも戦闘力が違う
違いすぎて追いつくことを恐れそうで、張り合うことを躊躇う。

「行くしかないよな・・・ッ!」

 もっとマージンを削り込んだ、本当にワンミスすなわち終了の走り
よこがもし、実の妹じゃなかったら絶対退いてた。
否、妹でも気が退けるが、そうはいかない、こんないい雰囲気は
そうそう巡ってくるわけじゃない。

「アニキっ!大丈夫!?」

 風の切る音、タービンの仕事音、神経を妹に傾けてる暇さえ許されない
何かに気を向けた瞬間、2000GTにガバッと差をつけられて
今日という日は終わってしまう、それだけはイヤだ。
なんとしても湾岸までは食らいつかなきゃお話しにならない。
宝町のストレートを、2000GTが全開フルスロットルで駆け抜ける
迫力は増大し、直線でR32が引き離される。

「・・・ッ!」

 右に進路を取って、さぁ右ヘヤピンだが
ここからも常軌を逸している。ブレーキングがかなり遅い
しかし、スピードを叩き上げることを安易にこなす2000GTは
スピードを殺すこともまた、安易にやってのける。

「オイオイー!」

 2000GTのすべてが、消耗と強化を補うバランスの域を飛び越えていて
常人では到達できそうもない高レベル、デチューンされたこの状態で
このレベル、もしすべてを解放したら。
C1一周で終わる事を了承したうえで試したら
天使の落し物は、ドライバーの命を"確実"に奪うレベルへと昇華してしまうだろう
恵二は鳥肌を禁じえない、新環状に突入してもなお、2000GTのハイペースは終わらない
R32がフルにマージンを使いきっているのに、あれで堅実な走りと言われたら。

「ヘコんじゃうな、まったく・・・・!」

 恵二は自分では分かっている、腹八分目で止めてきたチューニング
車は楽しむもの、親父にそう教わって、堅実な車生活を送り
そこそこに楽しんで、そこそこに遊んできた。
大事なR32をいじくって、バランスを取って、峠や首都高
オールラウンドに車を楽しんできた、なんでもこなす
可もなく不可もなく、車としての使命をかすませない
そういう付き合い方をしてきた。ホンキになれば結構速い
だけれど、気軽にコンビニや図書館にだって乗りつけられる。
汎用性を含ませたチューンドRはイチバン賢い乗り方
自分でもそう自負して乗ってきた。
しかし、やっぱりツマらなくなってしまう、すべてを均一化すると
目立つのは退屈ばかり、楽しかったはずの走りは
あたりまえになり、あたりまえは今までを腐らせる。

「もっと、もっと上が必要だ・・・・」

「アニキ?」

 油温、水温、マージンを使いきったR32はもう湾岸のワントライですら
そのすべてを使いきれないほどに疲弊している。

「やっぱダメかぁー!」

 新環状途中で、恵二は思い切ってアクセルを戻す。
ヒュルル・・・バックタービンがまるで一安心する仕草にさえ聞こえる。

「だめだ!これ以上ムリっ!」

「ふぅ・・・」

「どうした?月菜」

「もうアニキってば、アタシの存在忘れてさぁ怖いっつーの」

「悪い悪い、クーリングしながらファミレスでも寄ってこ、奢るよ」

「マジ!?」

「おうっ」







『台場11号線レインボーブリッジ』

「おさえて、抑えて・・・」

 はやる気持ちをおさえて、レインボーブリッジを走り
2000GTとハチ合わすためタイミングを図る、当然アテなんてナイ
ただ、適当なタイミング読みでも、こっちの方が、抜けるのは速い
湾岸線上でハチ合わせることは誰にでもわかる。

「ミッツのS15速くねーか・・・・」

 やっぱり車内で傷つく男、桜井豊
180psじゃ物足りない、奇しくも500psを絞り出す恵二と
同時間に同じことを考えてしまう。

「ったく・・・どいつもこいつもなんで車に縁があるかねー・・・」

 周囲の恵まれた環境に悪態をつく豊
さすがに一定の領域ではため息しか漏れない事実に
やんわりとショックはそそがれ続ける。

「ぉぉお・・・有明JCT・・・」

 一方心拍数は上がりきりの光利、有明JCTを示す表示板に高揚は高まり
我慢できずにアクセルを開けていく。

「おいおい、落ち着けっての・・・」

 ロードスターも否応なしに付き合い、速度を上げる。
ため息混じりの走りにどこかしらけた気分を隠せない
しかし、走ること自体は嫌いじゃない
もどかしい自己嫌悪がイヤになり、何を考えてるんだと自分を抑制する。
今はとりあえず、走ることを楽しもう、と。

 有明JCTに合流すると、案外ビックリな感じで2000GTが走っている
というか、むしろ流している様にしか見えない
拍子抜けする二台、カクッと首が傾げる。
豊が2000GTの横に並ぶと、虎彦が親指を立てて、いつもの流そうぜサイン

「どーしよっかねー」

 と、どうかな?といった表情をしておいて、豊がフルスロットルで逃げる。
意外な豊の行動に、おっ、という表情で虎彦も続く
当然、光利のS15もあとに続き、しばし200km/hクルーズの流れ
観察していくうちに、2000GTのトルクバンドは広いらしく
先ほどから、6速で走行している。ことに気づく
それでも、豊や光利らにとってみれば、割かしギリギリまで踏んでいる勢い
20000GTにとっては、こんな戯れるような速度だろうが
虎彦はいたって自然に、楽しんで走っている、わけ隔てない気持ちで
虎彦は湾岸を走る。なんとも言い表せない、良い雰囲気を持ちながら。








『お台場、某イタリアンファミレス』
 真夜中の時間帯は流石に駐車場も空いている。
申し合わせた様に、空いた三台分のスペースに並んで駐車し
車を降りたところで、ようやく、光利と虎彦が初めてまともに
顔を合わせる。

「俺は黒澤 光利、そっちは?」

「虎彦。」

「苗字も含めて教えてくれよ」

「苗字は五十嵐」

「よろしくな、虎彦」

「よろしく」

「さ、腹減ったし、なんか食うべぇ食うべぇ」

 顔合わせを済ませた二人を引っ張り、店内へ入る豊
店員に案内してもらい座席に座り、ホッと一息する。

「虎彦どうするよ?」

「まぁ・・・ドリンクバーだろ、それとドリアかな」

「光利は?」

「シーフードピザだろ、サラダにデミグラスソースハンバーグセット」

「え、?」

「だから、ピザにサラダにハンバーグセット」

「食いすぎじゃね?」

「今日は腹減ったんだよッ」

 あらかたのメニューを決め、オーダーボタンを押すと
間もなくして店員がやってくる。 

 光利が一通り店員に注文を申しつけると
三人は一斉に息を付く、限界域での走行は割に
体力を奪うもの、ものの数分ほど息つくと
各々のドリンクを求めて席を立つ 

「コーラ、コーラ・・・」

ドンッ

見知らぬ人と肩と肩がぶつかり、虎彦は反射的に

「あ、すいませn」

「おっ、虎彦君じゃねーか」

「あ、恵二さん」

 ついつい気が抜けていてポカーンと答えてしまうが
肩をぶつけた相手はさっきまで一緒に走っていた恵二

「まさか同じトコにいるとは」

「首都高は狭いですね」

「まったくだ。」

 終始笑いながら会話を交わしていると、恵二の後ろから
月菜も現れる。

「アニキー!ジュースおそーい!」

「お、月菜、この人がさっきの2000GTのドライバーだよ」

「・・・・・」

ハタと振り向く先に、ボケッと佇む虎彦

「ども」

先に虎彦が挨拶を飛ばす。

「こ、こちらこそ」

 なーんとも微妙な空気を感じ取った虎彦は、速攻的にコーラを汲むと
会釈をして場を離れる。

「なっ、虎彦君!そっち席空いてる?」











「わかってるねー!」

恵二とすっかり意気投合する・・・

「Rに変なエアロ付けるなんて言語道断ですよォ!」

光利に豊も楽しげに話を聞いている。

「あのー、五十嵐君はホントにあの2000GTを?」

盛り上がる三人をよそに、月菜が虎彦を静かに質問をする。

「うん、そうだよ。」

 小さく、ドリアをゆっくり食べる虎彦
虎という名前には似つかわしくない小食ぶり
月菜もそれには意外なようだ。

 車好きにとって、車で延々語る時間は
走っている時のそれと同じくらい楽しい時間
しかし、話が重なり積もってくると・・・

「なーんか走りたくなってきたなぁー!」

「同意」

「同意」

 光利、豊に恵二と既に席を立ち
グワッと視線を降ろすと、ゆっくりドリアをハフハフ食べる虎彦

「虎彦、走り行かない?」

豊がいつものように虎彦を誘う

「え、まだドリア残ってるんだけどサ・・・」

「よーし!満場一致!さぁ行こう!」









 ファミレスを出て、いざ車の前に立つと
光利に一つの案が浮かぶ

「虎彦!」

 虎彦が2000GTに乗り込む寸前で
光利が呼びとめ、計画の旨を披露する。

「2000GTのナビシートに乗せてくれないか?」

「ミッツ、S15はどうすn」

「はいはい!アタシが運転する!」

「こ、こらっ!月菜!」

「俺は別にかまわないよ」

「よし、S15を頼むよ!」

キーが宙を舞い、月菜の手中に落ち着く

「月菜、免許証もってきてんのか?」

ッピ

「ありますー」

ポケットからクレジットカードを出す様に免許証を取りだして見せる月菜

 2000GTにウキウキと乗り込み、いそいそとハーネスで身体を固定する。
横では虎彦がイグニッションにキーをさし、セルをひねると
シティーモードながら圧巻の整然羅列した乱れのない
エグゾーストが車内を包む。

「おぉ・・・」

 ゆっくりと多板のクラッチを繋ぎ、先頭を切って前に走りだす。
整然と発声されるエグゾーストがより、一本の絹糸のようにまとまり
天高くほとばしる。
ごくり、と喉なるほど、一挙手一投足の動きが別次元
後ろには恵二、月菜、豊と続く、それにしても
後ろの車達がかすんで見えるほど、その衝撃は強大で
それが湾岸に乗るとなると、全身にゾクゾクとしたしびれが走る。
お台場中央の交差点から、臨海副都心ランプへ
徐々に加速していく2000GT、虎彦がシティモードから
レースモードへ、絹の様なエグゾーストは力強くなり
その性能そのままに体現するような音は、さらに光利を虜にする。

「ふ、踏んでみてくれ」

 願いを汲みとった虎彦がアクセルを深く踏み足して行く
加速Gが一般車の比ではない、F1エンジンの印象など
高回転域だけかと思っていたが、このフレキシブルな加速
F1エンジンの印象がガラッと組み替わる。
左右への移動も非常に安定しており、リアのあんな小ぶりな
ダッグテールウィングだけでよくもこんなに正しく走るなと
思わず関心と感動を覚える光利

 そして、NAの淀みないフィールにも感動を覚える。
磨き上げたNAエンジンの快感すら覚える吹けあがり
絶対的なモアパワーよりも、車を走らせたいと思うようなフィール
それに一気に傾向する光利、そしてその大きな衝撃は
光利に雑誌の一ページをフラッシュバックさせる。

「SR20のNAチューン・・・・」

 湾岸では300km/hこそ出さないものの、200km/hオーバーの
異空間をナビシートで体感し、横羽での
アップダウンをいなす2000GTに別の驚きを覚え
C1での身のこなしの軽さに、V10エンジンを積んでるのか疑いたくなる。
その速さを判断する基準は、背後の三台が見えなくなるあたりからも
ホンモノだということが容易に解るし、途中で横を抜けていく
同人種の車達も安易のままに置き去りにされる。

「ヤバすぎだろ・・・コレ・・・・」

実によくわからない
光利は横に乗りながら、虎彦のドライビングテクニックが
洗練されていることに驚く
話によれば2000GTを預かりせいぜい数カ月
そんな短期間でこんなデリケートなものを使いこなしてしまう
なぜだかまったくわからない
自分がこの2000GTをもらったとしても、こんな短期間では使いこなせない
それに、虎彦は普通のフリーター、別段サーキットに通ってたり
プロドライバーからあれこれ指南を受けているわけでもない。
虎彦は首都高にいきなり乗っかって、行き当たりばったりで走ってきた
走れればOKというアバウトさではないが
そこそこに70スープラを乗ってきただけなのだ。

(センス?努力?なんか違和感あるな・・・・・)

 それと、160km/hを前後するときに妙に車高がクッと下がる感じを受ける
もう一つの疑問が、あんなリアの小さいウィングでよく湾岸線を
200km/hオーバーで走り、コーナーを躊躇なく抜けていけるなということ
物理的なものもセンスでどうにかなってしまうのだろうか?
疑問を抱えたまま、2000GTのナビシートを堪能する。









「プハーッ!やばかったなー!」

「今日は随分と走った気がするよ」

 一般道に降り、コンビニで休憩
恵二達もすぐにコンビニへ到着する。
気づけば、自分たちの町までそう遠くないところに降りていた
帰巣本能とでもいうのだろうか。

「虎彦君ーッ、なんだかんだで夜明けだ。ウチの店が近くだから休んでいくといい」

「あ、はい」

「光利さーん!シルビアどうしますかー!」

「ショップまで運転してよ」

「うっそ!いいんですか、ヤタッ!」




「ほら、お疲れ」

隅で止まるロードスターの豊に缶紅茶を渡す虎彦

「お、悪いな」

「今日はかなり走ったよな」

「お前が速すぎてこっちはヒィヒィだっての」

「わりぃわりぃ」

「恵二さんだっけ?」

「恵二さんがどうかした?」

「あの人、絶対速いよ、普通っぽく見えるけどさ」

「俺もそう思う、端々に違いがあるよな」

「妹さんも案外かわいいしな!」

「それ関係ないだろ」



 数十分の休憩を過ごして、下道を一時間ほど走ると
恵二のR32がプレハブのガレージの前に止まる。
後ろに2000GT、ロードスター、シルビアと止まり
各々が車をやっと休憩させた時には、もう周りが薄明るくなっていた。

「おーおー、朝帰りかガキ共」

「オヤジィ・・・・」

「首都高もたいがいにしとけー自分がすり減って無くなるぞ」

「わーってるよ」

「後ろの三台はお友達か?」

「コレ、ウチのオヤジ、時本眞之助」

「親父にコレはねーだろ!」

 タバコをくわえた髭面の中年が虎彦達を視認する。
職人、という感じの人柄だ。

「あの!」

光利が眞之助を突然呼びとめる。

「オレ、黒澤光利ってんですけど、ここでオレのシルビアをチューンして下さい!」

「朝からカンベンしてくれよ、ウチはただの修理工だ」

 眞之助は笑い飛ばしながら光利をあしらうが
光利が絶対退かない、その芯の固さはヤクザ譲りからか
頭を下げたまま、その場で微動だにしない。

「オイオイ、頭上げなよ・・・・」

「・・・・・・・ッ」

困った顔で吸うタバコの煙は急に冴えなくなる。

「いいじゃん、やってあげなよパパ」

横から月菜が助け船を出す。

「光利さん、かなり丁寧に車乗ってるよ、シルビアもスゴイ綺麗だし」

「んー・・・・どうしたもんかなぁー」

「よろしくお願いします。」

「ウチはそんなにレベル高くねーぞ?」

「構いません、ココでお願いします。」

 頭をポリポリと困った素振りでかき
携帯灰皿にタバコを入れると、光利の肩を眞之助がポンッ
と叩き、答えを出す。

「ヤるから、頭上げてくれよニイちゃん」

 ガレージから出てシルビアの周りをグルッと見回し
タバコを燻らして、しばらく考えた後

「C1が主なステージだな?」

「はい、C1が僕のステージです。」

「そうか。」

 シルビアから目をずらし、あえて視界に入れてなかった
虎彦の2000GTを初めて眼下に置く
小ぶりなウィング、アグレッシヴな様相のカナード
そして、慎之介は虎彦にひとつ、疑問を投げかける

「非現実的な2000GTだが、湾岸を走ってダウンフォース不足を感じたことは?」

「・・・・ない・・・ですね?」

 よくよく考えればそんな感じは一切したことがない
大井からの左コーナーも路面にしがみつくように抜けられる

眞之助が手をついて、2000GTの下を覗き

「恵二!懐中電灯!」

 胸ポケットにさしていたペンライトを渡す恵二
ペンライトの小ささに不満そうな顔をしながらライトをつける
日が昇り始めても、シャーシ底面はいまだ見づらい。

「ほぉ・・・・参ったな」

 シャーシ底面を覗きながらため息もらす眞之助
恵二や月菜、虎彦達までも2000GTの後ろから底面を覗きこむ

「まっ平ら・・・・」

 月菜が思わず感想をもらす。
虎彦もまじまじと底面をあらためて見て、まっ平らの底面に
少々驚いてしまう。

「こいつぁ、ヴェンチュリー効果を狙いに行ってる感じだな」

 と言っても、レーシングカーの様な大げさなディフューザーや
底面ではなく、スーパーカーの様な必要最低限という感じ
BNR34のディフューザーよりも控えめな気さえする。

「エンジンも見ますか?」

「いーや、遠慮しておく」

 時計を見ていた豊が虎彦に時間と帰宅を促す
虎彦も時計を見てみて、時間を把握すると、ドッと眠気が襲う
大きなあくびをかましてしまい、疲れも同時にアピールを始める。

「あの、よかったら寝ていきます?」

 月菜が虎彦と豊を気遣う、二人は顔を見合わせ
しばらく考えた後

「じゃ、甘えてすこしだけ、雑魚寝で構わないんで」

「お願いします。」

「じゃぁちょこっと自宅へ案内しましょう、すぐ裏なんで」

 ガレージの裏を見ると、そこそこの一軒家が建っており
縁側の奥に和室が見える。


「さ、あがってください」

「おじゃましまーす」

 小学生のころの友達の家にあがる感覚を思い出しつつ
畳のいい香りがする。ちゃぶ台の前に座ると
月菜が冷蔵庫からコーラを出して持ってきてくれる

「あ、ども」

「コーラで平気ですか?」

「あーもう全然余裕です」

「豊。全然の使い方間違ってるぞ」

「いーの!」

 出してもらったコーラを飲み干すと、さすがに眠気が意識をかすませてくる
目をこすりながら、あくびをかます豊

「じゃ、ガレージに居るので、お好きにしててください」

 簡単な会釈で返すと、月菜がガレージに戻っていくのを見届け
横になる二人、ちゃぶ台の足越しに豊を見ると、もうすでに寝息をたてている。
虎彦もスーっと眠りに誘われ、身体を休める。







『第六章:恵二とスカイライン』

「んぁ・・・・」

 目覚めると昼過ぎの日の光が和室にさし込む
むくりと起き上がる虎彦の横でまだ豊は寝ている。

「もう1時か・・・・」

 豊を置き去りにして、ガレージの方へ向かうと
シルビアがもうリフトの上に上げられ、眞之助がシャシー底を覗いている

「おう、目覚めたか」

「あ、ハイ」

「恵二なら月菜のZ33に乗ってどっか行ったな」

「どっか?」

「さぁな、カー用品でもあさりに行ったんじゃないのか?」









「アニキ、突然中古車屋行ってくれってどうしたの?」

「いやさ、R34ていいよなーって思って」

「34買うの!?」

「バーカ、そんな金ねーよ」

「ハイ、とーちゃく。いつものトコじゃなくていーの?」

「あぁ、いいの。どっか回ってくれば?この大通りならちょっとは楽しめるんじゃないか?」

「余裕で遊んでくる。」

「行く気マンマンかい!」

 Zから降りて、月菜を見送ったら、手当たり次第に展示車両を眺めて行く
やはりヨレが漂っている車両や値段相応にいいモノ、ふんだくりかけてるもの
大体の見当がつく。スポーツカー中心の中古車屋
セールスの人間が何分かたった頃に出てきて、恵二に接待を始める。

「お車をお探しですか?」

「えぇ、まぁ」

「CT9AやGDB-Fの低走行車、入ってますヨ!」

 ツナギ姿の恵二を見て、そいういった類いが解ると踏んだ営業が
流行りの2Lターボをススメてくる。

「もしかして、JZA80やRをお探しですか?FDもいいのがありますが」

「Rあるの?」

「裏に3台ほど、未展示のモノがありますヨ!」

「見せてもらえる?」











「俺だ」

「どうも、上森さん」

「360の調子はどーだー?」

「バッチリですね、ナラシも楽しいですよ」

「まぁな、ずっとつきっきりで仕上げたタービン組みこみは自身アリだからな」

「ラグも少なくて踏みやすいです。高回転での伸びが桁違いですよ」

「今は0.5Barしかかけていないが、ナラシ終わったら全バラ、チェックで
1.0オーバー向けてリセッティングしていくぞ」

「その域で得られるパワーはどれくらいですか?」

「700psに手が届く、そうとだけ答えとく」

「700ps・・・・」

「直線ならあの2000GTも余裕でぶっちぎれる車になる。所で今はどこにいるんだ?」

「念入りにナラシしたいーなんて考えてたら鳥取ですね」

「はぁ!?」

「1泊2日でナラシ慣行中ですね。」

「ごてーねーにどーも」

「それじゃぁ、明日には帰ります。」

「わかった、待っている。」

 携帯電話を片手に伯耆国山岳美術館前でフェラーリと休憩を挟む
放熱のためにリアガラスをF40の様にスリット入りにも変えられ
ハマーンエアロも様変わりし、GTCをモチーフにした様な
見かけないエアロが組み込まれている。
リアもガーニッシュ処理され、なるたけ熱を逃すように作られている。
フロントバンパー中心部には耐久レースさながらの補助灯も追加されており
GTウィングと相まって一気に過激さが増している。
もう気品さは漂っておらず、攻撃的な構えしか目に飛び込んでこない。

パクッ

 携帯電話を閉じ、手に持つジュースを一気に飲み干すと
F360にいつもの様に乗り込んでエンジンをかける。

「ホワイトペガサスに負けちゃならねーよな、こっちは本物だし。」

 Aピラーに追加されたブースト計はソレがあることを物語り
官能的なV8にターボが添えられる。なかなか居ない個体となっている。











 R34が2台にR33が1台、展示前そのままの状態、洗車もまだの様だ。
イメージカラーのベイサイドブルーのV-spec2
ミレニアムジェイドのM-spec、33はチャンピオンブルーのLMリミテッド

「このR34なんてどうですか?M-specは程度がいいのでチューンに向いてますヨ!」

「あぁ、ハイ・・・」

 進められるがままにR34のドアを手に取り、ドアを開ける。
確かに綺麗だ、実走行3万キロというだけの事はある。
だが、何か違う、根本的に違うのだ。
R34に2000GTを追い詰める答えがあると思って来た下見だが
R34を改めて目の当たりにしたって、答えが出るわけでもなかった。

 静かにR34のドアを閉める。後ろで営業笑顔で恵二の一挙手一投足を監視する営業
恵二は、M-specの横にあるベイサイドブルーのV-spec2を跳びこして
奥のLMリミテッドに目をやる、基本的にはV-specにチャピンオンブルーを
塗装した、というのが実のところのモデルだが、初めて恵二はドライビングシートに
自らを沈め、エンジンはかけないが、ステアを両手で握りしばらく何かを考える。


「これは何万キロ走ってるんですか?」

「こちらですか?こちらは7万キロですね、76,000kmとなっていますヨ」

「7万か・・・・」

 数字の割には好感触、内装、特に運転席を軸に使用感があるが
助手席やリアシートには特にヨレはなく、インテリアの簡単な目視後は
試乗、それが当然の流れとなる。

「試乗できますか?コレ」

「はい可能ですヨ!、少々お待ち下さい。」

 確実に横に鎮座する2台のR34よりはヨレている。ボディやエンジンの劣化という意味ではなく
製造年数からの兼ね合いで、確実にモノとしては歳を重ねているということ、だが
それは気にしなければ大したことはない、日本車は特にそういった点では劣化を
感じにくく、造りがいいことが解るがそれは逆に、壊滅的なダメージも
その造りで隠されてしまうこと、こればかりは走らないと分からない。

 5分もしないうちに営業がキー片手に走って戻ってくる。
ずっと張り付いて、ゆっくり車も見れない感じは営業としてバツだが
対応の良さは評価に値するかもしれない。

「こちらがキーですネ、あと・・・」

 試乗に関して様々な説明を受け、営業も乗り込みエンジンをかける。
聞きなれたRB26DETTの音、異音、奇音は無く、本当にただ7万キロ乗った個体らしく
発進もいたって異常ナシ、クラッチを優しく繋ぐと、スルスルと中古車屋から
R33を連れ出し、大通りを走り始める。

 2速で少し深めにアクセルを煽ってみてもRBのレーシング性はスポイルされておらず
前オーナーは本当にGT-Rそのままで付き合っていたようである。
恵二にとってとても好感触で、Rはノーマルでうんたらかんたら言う連中を
散々目の当たりにしてきた恵二に、このLMリミテッドは魅力を増して行く。

「これ、前オーナーは?」

「60代の方でしたネ、なんでも白内障だとかで」

「そうですか・・・」

 大通りを適度に走り、信号でUターン、中古車屋へ帰る。
コーナーもろくすっぽ乗らず、ただ直線、ひたすら直線
出しても80km/h、商用のカローラにも抜かれる。
だがR33は必要にして十分に恵二に訴えかけている、ローンを組めば
このR33を買うことはできる。ただどうにも踏ん切りがつかない
魅力的なのは必要十分に理解できるが、R32でも十分に2000GTを追える
そんな気がするのも事実、根本的に違いを見いだせない。

「お疲れ様でした。申し遅れました。ワタクシ、営業の小園と申します。」

 名刺を手渡され、恵二も名乗り少々会話したところで、月菜が戻ってくる。
店の前に横付けされるZ33、営業小園も見送りについてくる。

「じゃぁ、また今度」

「はい、お待ちしています!」

チャンピオンブルーよりもキャンディなブルーのZ33に乗り中古車屋を後にする。

「どうだったの?」

「R33見てきた。」

「イイカンジ?」

「いい感じだったよ、キレイだったし」

「買うの?」

「どーだろ?」

「もうエンジン降ろしてるかな?シルビアの」

「やってるかもしんないな。」








NEW 2010/02/01 UP

「ふぅ、NAチューンねぇ・・・・」

 ドンガラになったフロント部分を見降ろしながら眞之助がため息をつく
眞之助の脳裏に光利の注文が巡る。



『TD-05タービンでも突っ込むか?』

『NAチューンを・・・お願いできますか?』

『はぁ?』

『NAチューンでC1でも良いんです、あの2000GTを追いまわせるモノを』

『おいおい、いきなりあんな凄いの狙っちゃうわけ?』

『一目見たときからというか、乗った時に思ったんですよ』

『・・・』

『混じりッ気がないってスゴク綺麗なんだなって』

『混じりッ気ねぇ・・・・』

『だから、シルビアでも混じりッ気のないフィールがどうしても欲しいんです。』

『あのなぁ、SRってのはNAにすんととんでもなくパワー不足に泣くんだぞ?
基本設計も古臭いし、ロッカアームが邪魔でロクに上まで回せねェ
ドーピングしないでどう速くするつもりだ?腕か?根性か?』

『・・・・・』

『車は気持ちどうこうで速くなったりはしない
性能を使い切るのは気持ちだが・・・それだけは覚えておきな』

 ぐぅの音も出ない、経験に裏打ちされた眞之助のアドバイスもとい説得
だが、NAのフィールがどうしても譲れない、あの体感したフィールが。
いつでも踏み出せる親しみやすさ、でしゃばらないパワー
いつも本気、踏んだ所に正圧も負圧も細かい話はない、常に負圧
なにより本当に綺麗だったあのエンジンの声、生き生きとした感じを受けたあの声
頭に焼きついて離れない、あの時に体験した全てが。

『ターボではダメなんです、あのフィールは引き出せない、そう言い切れます。』

『・・・・』

『あの背中を押すんじゃない、並走者の様な仕事をターボはしない!』

『オーケー、オーケー、解った解った、そこまで言うならNAで作る』

『!』

『ただ、常にそれが限界、これがNAチューンの行き先だ、扱いやすさ以外は一呼吸おけばトロさしか見えなくなる。』

『はい、NAでお願いします。』







 光利の固い決意だけが印象に残っている。
再三の不利だという話にも耳を傾けず、NAに拘る。
拘りを持つことは嫌いじゃなかった、久しく面白い人間に出会ったと感心した。

「4連スロットルどっかにあったかな・・・?」

 物置に姿をくらます眞之助、タバコを加えたその口元は妙にうれしそうで
なんだかウキウキとスロットルを探す。

「おぉぃ・・・なんだよこの古新聞の束は、捨てとけよ・・・」







『第七章:シルビアの夜明け』

 あれから数週間、湾岸線では2000GTに加えて銀の360モデナも噂に上がってきていた。
連日のように2000GTと360が湾岸線を他を圧倒するように走っているのだとういう
どちらも数カ月前までは無名に等しく、技術も持ち合わせていない。

「アニキ、凄いね虎彦さんともう一台新しくウワサになってるって」

「まったく、本当に公道ってのは解らないね」

「あ、パパ、おはよう」

「何してんだ?お前たち」

「いやさ、あの2000GTに加えて、銀の360モデナも出てきたとかでさ」

「で?」

「アニキは、そんなに彼らがドラテクを持っているわけがないのになぁーって」

無邪気に月菜が恵二の意思を勝手に代弁する。

「技術は底上げ、いわば原子力、そこから上は気持ち、火力発電だ」

「なに言ってんの?親父」

「公道なんてのは、アクセル踏み切れりゃ速いんだよ」

「へ?」

「簡単じゃねーか、世間体、社会、最悪の結果、これらを想像すると、アクセル開度はあっという間に浅くなって
開度時間も短い、性能があっても使わない、守ってしまう。」

「ビビリミッターってこと?」

「そうじゃない、普通の一般道の信号発進でもそこまで踏むか?ってやついるだろ?」

「うん」

「GT-Rで信号発進、法廷速度までで止める、その横を80km/hまで引っ張るワゴンRが抜けていく、速いのはどっちだ?」

「ワゴンR」
「ワゴンR」

「そうだ、性能は底上げ、そこから先は気持ちだ。
法を犯しても自分が何してるか解ってて先に行く奴だけ『速い』そうこの世界では言われる」

 電力発電の際に、原子力は電力供給の底上げと言われ、電力消費者数の全体値が上昇すると大まかに電力を大きく
供給するため原子力発電が発電量を上げる。
そこから先の最低必要電力供給の微妙な調整は、微調整が可能な火力発電が使用される。
 眞之助が言っていたのも、馬力を大きく供給するためエンジンをチューニングし、そこから先のアクセルの調整は
微調整ができる人間が乗り手として行う。
湾岸で2000GTより速いのが居ないというのは、底上げ幅も元々大きく、その先も容赦なく踏んでいく気持ちを持ち合わせた虎彦だからとのこと。
終始、月菜は頷いていた。

「恵二、お前も昔から気にしないタチだったよな」

「え?そう?結構セーブしてたけど」

「いいや、お前も踏み続けるタイプだ魂抜けても踏んでるタイプだ。」

「あー、いえる!アニキ結構踏むよねー」

「良く言うだろ?頭のネジ、二本か三本くらい足らないって」

眞之助が定番の台詞を言う。








 箱根の山に包まれ走る二台のスーパーカー、共に「馬」の異名を持つ
ボディの端々に跳ねた小傷や汚れが、首都高を一晩中走りまわっていた事を証明する。
それほど速度は出さず、前方にいるファミリーカーやすれ違うスポーツカーなど、二台は流れにまぎれる。
穏やかな時間の中に、改造された自動車は良く似合う。ギャップが美しさを付加してくれる。

「いつ来ても箱根はそこそこ空いていていいなッ!」

「そうですね」

「まーしかしホワイトペガサスちゃん、また速くなってない?」

「そーですか?むしろモデナの変わり様にびっくりですよ」

「俺もビビったね、上森さんは普通のメカニックじゃないよ、ありゃ」

「仮にもこの二台は上森さんが組んだんですもんね」

「そうだなー、お?なんか取材っぽいことやってるな向こうで」

「取材?」

「ありゃテレビ神奈川っぽいな、俺も出た事あるよ」

「テレビに!」

「だって小説が売れちゃったもんだからどこかしことも取材だらけだったよ」

「あ、小説」

「あれー?もしかして俺の書いた小説読んでくれてないの!?」

「いやぁ・・・本はなんというか・・・」

「ジョーダン、ジョーダン!あんな眠い小説読んだらダメダメ」

「え、自分で自虐すか」

「だって書いてて眠かったし」

「ええええ」

 より隼と共に行動するようになり、その気さくさと思い切りの良さに
一目おく虎彦、自分にはない竹を割った様な性格が面白い。
豊も先日共に走ったが、終始隼の話すことに逐次爆笑するほど、非常に頭の回転が早い。





「では、三珠さんにお伺いします。装丁家になるにはどうしたらいいですか?」

「装丁家にかぁ、とりあえず美術館でも見て回ろう!ですかね」

「美術館ですか!」

 何台もの機材が女性アナウンサーと、その三珠と呼ばれた男を囲む
その男とアナウンサーの後ろには最新型のポルシェ・ボクスターが止まっており
どうやらドライブルートを走りながら、著名人に取材をする番組らしい。




「なーんだ、三珠さんか」

 遠巻きに見ていた隼が目を凝らし、その人物像を確信する。
小説を書くのに目を酷使しているが目はいいらしい。

「三珠?」

「僕の書いた小説の装丁をしてくれた人だよ」

「装丁って、本の表紙を決める・・」

「そうそれ、よく知ってるね、三珠さんは売れっ子装丁家さ」

「売れっ子・・・」

「テレビの取材でポルシェねぇ」

「ボクスター、新型かな・・・」

「広報車だろうな」

遠巻きに取材を見つめるも、すぐに飽きたのか隼がビューラウンジの方へ歩っていく。

「コーヒーでも飲もう、おごるよ」

「あ、はい」










虎彦2000GT編へ戻る

豊の好きなアイスはガリガリ君らしいぞ!