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このロゴも結構古いです。

ヤビツ峠のメッサーシュミット

6ページ目突入


第十四章

「さて、ものの数分で戻ってくるでしょう」

そう言い、マスターは喫茶へと戻っていく

「ハルトさんはどうするのー?」

「戻るに決まってんだろー、蚊には敵わねーよ」

2台を見送った4人は、木霊すエグゾーストを聞きつつ
喫茶へと踵を返し、夜風の中を歩く






――ちくしょー、良い動きするな・・!

背後からただ玄白を追いかける状況の風仲は
玄白のウマみを引出す走りに、後ろから感嘆を呟く

――狭角V6てーのはそこまで頭カルいのか?

基本を守りながらも、コーナーへの進入は
後ろから見る限り、TTというより
まるでGT-Rやポルシェ911を連想させる。
パッケージングは違うし、車もまったく違う
それなのに、Rや911と同じ空気感を醸し出している。

――基本的に普段はほとんどFF、大きなチューニングも行われてない
それなのに、この空気感はなんだ?玄白、君は何者だ?

――TTは速いのかー!?

後ろから見る限り、玄白のTTは"踏み"抜いて走っている。
そう、よく言う4WDを武器とする車に多い攻め方をしている。

――トルク配分はTTRSと同じだが、世代的に古い8Nを・・ここまで・・!





「人間てスゴイのな」

「ハルトさんどしたの?急に」

カウンターに座るラインハルトがボソッと漏らす。

「いやさ、実は玄白、あのTTが50:50のトルク配分で走ってると
思いこんでるんだよ」

カウンターから後ろに振り向いて、テーブル席の方に振り向きざまの
ラインハルトの話に、安彦は驚いた顔をする。

「ワザとだ、プラシーボ効果ってやつを仕込んだってわけ。」

――踏んでいけばOKのOKだぜーってな

「確かに、まだ駆動系のプログラムは弄ってませんね」

「えぇ!?ハルトさん、嘘を仕込んで走らせてたの?」

後ろから、話を小耳に挟んだ安彦がわざとらしい声で
ラインハルトの暴露をチクリと刺す。

「なんで?マズかったって?アビーのその顔はマズイでしょ!って顔だな」

笑いながら、安彦に向き直る。

「マズいも何も不利じゃない!あのコよくそれで今まで・・」

「いいんですよ。」

マスターが安彦を宥める、宥めるにはマスターの声は相性抜群と言える。

「現在、TTは8N、8J共にハルデックス電子制御の4WDで
常時トルク配分は前95:後5で走っています。」

「じゃぁ!ドアンダーじゃない!」

「ランエボでしばらく走らせていた時に、随分と車を振り回すことを
覚えていくな・・とは感じていたので、このままで良いな、と」

「後は、俺の組んだセッティングで気にもさせなかったって訳」

「本人は、オーバーステアを感知した時の駆動ラグは解っていたようですが」

――自分でなんとかしようと、非常に研究的に走り込んでまして
それを遮るのも"無粋"というものでしょう。






思い切りのいい飛び込み、瞬時に開けていくアクセル
テクニカルゾーンでは尚のこと離されていく風仲

――初期型のTTは転倒が相次いだ・・でもそれは本来の
オーバーを後ろからけっ飛ばして強制する・・そのヤり方

――ポルシェが関わった初期型は、ハルデックス電子制御を活用するために
リアを軽くした・・それゆえにアウトバーンでのリアリフトからの
転倒が相次ぎ、重いリアスポイラーが追加された・・

――玄白・・君はそれを知っていて・・?

風仲はもはや玄白の動きに魅入る他なかった。

折り返し地点に来た時、ハザードを焚く風仲

往路で決着はついた。

そして風仲もまた、こういった行為のまとめ方を解っている。

――テツ先輩、やっぱり貴方というヒトは何処までもウワテですね・・

――化けるってレベルじゃぁないですよ・・ホント・・



折り返しざまに玄白をとめる風仲、ウィンドウ越しに降参を口で伝える。






「本題はこの後からです。この前にも言った通り」

「縦置きにするんだっけ?おっちゃんもよくやるわー!」

「ターボは流石に縦置きでないと、あとは信頼していますよ」

「任っかせてよー!金属とは生まれてずっと大親友だもの」







この最終判断を下す走行の後、玄白と風仲が喫茶へと戻り
フェーズツーへの歯車が大きく動き出す。
玄白の出した回答は、マスターも快諾を出すほかない
しっかりと"納得"したものであったという

加えて、もう一つの大きな収穫は
"あやとり石川"の連絡先を風仲が知っていたこと。
福島で今も自動車に明け暮れている。そう聞かされたマスターは
即座に電話を手に取って、コンタクトを開始
この風仲の持ち寄った情報が完全なる計画始動の引き金となった。

そして、日にちがペラリペラリとカレンダーをめくる様に流れ
夏も帰り支度をしはじめ、秋が訪れようとしはじめた。

喫茶の前には日産キャラバンにパーツを満載にしたラインハルト
安彦がTTに合わせて造り出した補強パーツの数々

「じゃぁおっちゃん、向こうで必要なパーツができたら連絡して」

「多分、ピストンやクランクシャフトは間違いなく新たに必要でしょう」

「それはコッチに帰ってきて、本格的に仕上げる時でしょ?解ってる。」

「相棒、そろそろ良いかー?出発するぞー!」

キャラバンの前には玄白のTT、シュヴァルベンシュヴァンツの3人も
見送りに来ているようで、楽しげに談笑している。

「ターボ化縦置きだって?Rに真っ向勝負だな」

「桃野さん、帰ってきたら、また一本、お願いします。」

「おうっ」

笑いながら突っ込みを入れる桃野、だが同時にこの日は
ちょっと車の顔触れが変わっていた。
見慣れたキドニーグリルの車が無く
スリーポインテッドスターが大きく掲げられる車が鎮座する。

「で、高寺さん、M3CSLはどうしたんですか?」

「んあ?、あぁコイツのこと?」

「うんうん、俺もすごーく気になってた。」

桜宮が玄白の横に立って、高寺の後ろにある車をジロジロ見る。

「何って、買っただけだよ、この前」

「買っただってー!?」

ガクガクの高寺の襟首を掴み揺らす桃野

「このジョンブルが!ジョンブルが!」

「あうあうあうあうあうあう!」

「こんなんで峠走るの!?M3CSLの時点でおかしいと思ったけども!」

「桃野・・ッ!桃野しゃま!はなじで!ぐるぢぃ!」

「M3CSLはどうしたのさ?」

「ゲッホ!ウェ!親父のトコで元気でやってるよ」

「え?親父って高寺さんの」

「そう、父親、今までスポーツカー履歴がS130で終わってたからな」

「譲ったんですか?あのハードなM3を?」

玄白も突然の申告に驚くばかり

「もちろん出来る限りノーマルに戻してある。腰痛いなーとか言いながら
喜んで毎日乗ってるよ、あちこち母親と行ってるってさ」

「で、ニューフェイスをAMG C63にしたの?ジョンブルさん」

「ジョンブルって、これでも知り合い筋から安く買ったんだよ値切って」

「ケチなジョンブルだなぁ」

「いやいや金ないから!無いからね!」

「無かったら普通にGDBとかCT9Aとか良いのあるよなー?玄白」

「確かに、ありますね」

「ほら、NAでトルクを引き上げるったらそれこそ、その数だけアレだろ?」

「一馬力、一万円・・・・だな」

「そ、玄白みたいにターボ化はM3CSLにはできないし、やったら死刑もんだ」

「変なとこで拘りあるもんな」

「流石、桜宮、解ってくれるね。で、メルセデスにずっと憧れてて、つい」

「つい・・・じゃねーし!じゃねーし!」

「ヒルクライムで桃野に真っ向から向かうならAMGしかねーなと思ってさ」

「・・・・!、いやぁ、まぁM3CSLでも暇はしなかったけどさぁ」

「桃野、解りやす過ぎるぞ」

桜宮の的確な突っ込みは、いつも脱線を防いでくれる。


「玄白!いつまでくっちゃべってんだー行くぞー!」

「あ!はいー!今すぐ!、じゃぁ桜宮さん、桃野さん、高寺さん!」

「おう、帰りを楽しみにしてるぞ」

「Rのケツ、また拝ませてやるよ」

「TTの慣らし、俺もAMGで付き合うよ」



3人からそれぞれ「らしい」言葉をもらいうけ
TTに乗り込むと、玄白はマスターを助手席
後ろにキャラバンのラインハルトをつれ
縦置きターボ化のために、福島の石川を訪れにアクセルを踏み込んだ。



「凄いことになりそうだな」

「Rで負けねぇようにしないと」

「縦置きターボ化、甘美な響きだね」

「凄いことになるわよ、3人とも現状で大丈夫?」

「約一名、すでにぬけがけでパワーアップしてます。」

「確かに、3.2Lから6.2、トルクは倍増だな」

「なんか悪いことしたみたいなのはなんで?」

「ジョンブルだから」

「それはカンケーないべさ!べさべさ!」






『福島県:相馬市台町の町工場』

「石川さん、ニヤけ過ぎてて不審ですよ」

「ほか?」

「そうか?って自分でも頬筋が釣り上がってるのわからない?」

「いんだいんだ、出迎えの件、頼んだど」

「解ってるよー、でもあの電話からヤケにソワソワしてて変だよ」

「まーあの人たちが来ればわかっぺ」

町工場前で、神奈川県のある方を向き
嬉しそうに"時"を待つ石川
この前の、マスターより彼に電話があった日から
彼は嬉しそうに待ち続けていた。
それは古き友と再会できるという
人間なら誰しも嬉しい事が、待ちきれないのと同時に
マスターから聞いた「教え子」との対面も
非常に楽しみであり、どうにもソワソワして落ち着かない




『R129:東名高速厚木IC入り口方面』

R412から右折するように、肩幅3車線のR129に入る玄白
後ろにはキャラバンのラインハルト

「ここから東名に乗って、首都高、常磐道、ですよね?」

「あ!」

「マスター?」

「私としたことが・・・・」

「?」

「コーヒーミルを忘れるとは・・・・・ッ!不覚!」

「・・・・・・」

「進路は任せます、常磐道中郷SAまで辿りつけば、到着も同然。」

マスターがコーヒーミルを忘れた事に悔しがってるのはさて置き
厚木警察署を右手に見た信号で停車すると
左側に、見慣れた黄色いフィアット バルケッタが止まる。

「あっ!」

玄白は反射的にウィンドウを下げ、隣に止まった神藤に声をかける。

「神藤さん!」

「間に合って良かったー、見送りにきた。」

「別に遠くまで消える訳じゃないので大丈夫ですよー」

「いやいや、そこはキチっとな」

「郷矢さんは?」

「後ろ」

「オレはココにいるぞーぃ!!」

「ホントだ。」

思わず笑顔がこぼれる玄白、やはり見送りというのは
嬉しいもので、青信号と同時に神藤が前にでると
やっと郷矢も姿を現す。

陸橋を超えると、ふたたび三車線、玄白を挟み
左に郷矢、右に神藤と、まるでTop Gearの様な並びだ。


そのまま、神藤と郷矢に見送られ
厚木ICから東名高速へと舵を取る。

夏とは違う、秋の涼しい風は車にも優しい
料金所を過ぎ、本線へ合流する。
ひたすら青い空の下を、オレンジ色のTTがスッーっと
加速して、長い東名高速に足を踏み入れる様は
ラインハルトも思わず「おぉ・・」と唸る。
綺麗な色の対比だ。

ここから、常磐道を抜け、ほぼ宮城にも近い
福島県相馬市台町までは、半日がかりの旅路となる。




『宮ヶ瀬湖』

「ん?和平?」

RB26DETTの音を聞き分け、ヤビツ峠の方を向く桃野
ヤビツ峠への分岐から、ガンメタリックのR32が出てくる。

後ろには白いS2000と赤い8Cコンペティッツィオーネ

「なんかあったカンジ?」

「なんも話は入ってきてないぞ?」

高寺と桃野も、あまりコッチには来ないジパングGTの訪問に
少々勘繰っている。

駐車スペースに入り切らないジパングGTの車は
路上に停車させ、和平らが降りてくる。

「珍しいな、コッチに顔だすなんて」

「そうか?」

高寺が開口一番に、8Cを駆る篠岸に声をかける。

「なんかあったの?」

桃野が心配半分、疑問半分で和平に問う

「いや、ちょっとコイツを知らないかなって思ってさ」

和平は手にしたスマートフォンをシュヴァルの3人に見せる。

画面には一枚の画像、どう見ても
単なる赤いランチア ストラトスが写っており
3人は「?」という表情を同時に出す。

「知らないか・・・」

「どうしたの?このストラトス」

高寺は不思議そうに、しかし興味深そうにしている。

「それが、俺のSNSアカウントに突然メッセージが来て」

「SNSに?」

《件名》
件名はありません

《本分》
今度の金曜夜に、そちらのヤマに訪問させてもらう
この画像のHFR2000を覚えておいてくれ


「なんだこのぶっきらぼうなメッセージ」

失礼極まりないというか、単刀直入なメッセージに
すこし顔をしかめる桜宮

が、スマートフォンに映し出されたこのメッセージからは
なにか強気の気持ちも感じる。

「この赤いストラトスは、AERっていうコーチビルダーの
ストラトスをレプリカした物」

「あー!アタカエンジニアリングの!」

ピンッと電球が付いた様な表情をする高寺

「あー、知ってるわ、聞いたことある。」

桜宮も思い出したような顔をする。

「で、これが今度の金曜、表ヤビツに来る。
当然、ヤりあう事になるし、次は裏に行くだろうと思って
見せておこうって訳で、来たんだよ」

和平がスマートフォンをポケットにしまうと
高寺が出走者の事を気にかける。

「金曜の夜?和平がヤるの?」

「イヤ、正宗に走らせる」

白いS2000の前に立つ正宗、実はあまり
シュヴァルの3人とは面識が無い
なんだかんだ言いつつ、表と裏では
走行区域が違う上に、表組は展望台前駐車場
裏組は頂上駐車場に止まってしまうことが多く
仲違いをしているわけではないが
和平や篠岸くらいしか、あまり裏方面の人間とは
面識が無い事も珍しくない

先日の湖畔レースで、裏を抜けて来た事意外に
あまり裏も走らない

一般的には表が元々の"走り"としてのスポットであり

林道さながらの裏ルートは、シュヴァルや玄白等
数えるほどしか人口が居ない

元々車が走る様な幅でもなく、そこをR32やCT9Aで走るのだから
如何にシュヴァルや嶋倉に金鏡が、頭のネジの何本かが欠けている事が
想像に難くないだろう。

裏ヤビツは1.8m幅の車までは、走行しようと思えば可能であるが
本来ならば委縮するような道であり

なぜ、玄白やマスターが、裏ヤビツで速いのか?

それは、早い話が"逸した集張力の持ち主"という事が言える。

裏を走るには、長さも幅も状況も
その全てが目まぐるしく変わり、季節によっては
木の枝が生い茂り、圧迫感を覚えたり
場所によって路面の状況も変化する。

普通ならば、走行に適さない環境ではあるが
そこを選択して走る彼らの集中力は
他の同業者達とは常軌を逸していると言って良い

その集中力を携えて、走り切れる人間しか
裏ヤビツには住み着かない

リスクは多い、他の峠とは比較にならないほど
絶対的安全度は抜きんでて範囲が狭く
ワンミスすら回避しきれない場所がほとんどを占める。

そして、目立った事故が起きないのも
彼らが限定された僅かな時間に走る事に起因する。

精々1〜2本が彼らの常識

勝負は無理に白黒つけない、そういうヤリ方で
裏ヤビツに住まうのである。








『横浜市:春沢邸』

「お嬢様、例の準備、ちゃくちゃくと進んでおります。」

クッと腰を曲げ、キキョウに報告書を提出する執事

キキョウ専属の執事で、先日のちょっとした運搬作業でも
玄白とキキョウを巧みにバックアップした爺である。
その風貌から"ケン・ハーバート"という名前は
中々結びつきが悪い

「ありがとう、選抜チームのリストはある?」

「はい、こちらに」

再び、別の資料がと思いきや
小さいリモコンのスイッチを押すと、部屋の照明が落ち
巨大スクリーンが天井より降りてくる。

画面にはずらずらずらりと日本中の"走りの虜"になっている
様々な車が映し出される。

北は北海道、南は沖縄まで、日本国内に限定された条件の元
多種多様な車がスクリーンを所狭しと埋め尽くす。

「調査チームの報告によりますと、全国で141組、765人となりました。」

「レベルは?」

「仰せの通り、各県でのトップレベル枠を調査しました。」

「さすが、爺ね!」

「お褒めを頂戴するまでもございません」

手元の特殊なパッドの上を指で移動させ
各地のチームの車の写真を見ていく

「これと・・・、これと・・・」

パッ、パッと選抜チームをスライドさせるキキョウ
その画面に映る車はどれも一般の車ではない

だがナンバーを付けている辺りは、認可を受けている
ということになる。

「今回はプレ大会だし、こんなところかな」

そのチーム一覧には見慣れた車も混ざっている。

もちろん、玄白のTTや正宗のS2000も散見できる。

一体、キキョウが進めている準備はなんなのだろうか



突如、キキョウが選抜作業を中断し
部屋にまたがる大きなカーテンをセンターから押し分け
大きな窓を勢いよく開ける。

「来たッ!」

外を確認し終えると
キキョウが窓際から踵を返し、部屋の出口へ走る。
すかさず執事のケンがドアを開け放ち
廊下を行き来するメイド達も、廊下の隅へ避け
キキョウのレコードラインを邪魔しない。


バンッ!


超速で玄関の窓を開け放つと
苑森と松籠の姿が、後ろには紫のBNRC33と

「ディアブロになってるー!」

「良い個体探すの苦労したのよー?」

「言ってくれれば、松籠さんのために数秒で探しますよー!」

「それじゃ意味ないの、自分で探して、吟味するの」

「ハイッ!そうでしたッ!」

「キキョウちゃん、るんるんね、何かあったの?」

松籠の新車、ディアブロSE30を前にやや興奮しているキキョウ
それ以外にも、るんるんである理由があると見抜く苑森
毎度、毎度、苑森の洞察力の鋭さはキキョウも隠しきれない

「準備がちゃくちゃくと進んでて、もう少しなんですよーっ!」

「準備?あー!あのレースの事ね」

「そうですっ!あんな楽しいことヤルなら本格的に!」

「私はそのつもりで、ランボルギーニに鞍替えした様な物だし」

キキョウや苑森の紫よりも、若干明るい紫だが
その猛々しさはF355よりも倍増し
V12気筒、5.7リッターのエンジンは通常のモデルよりも
よりレーシングカー志向の味付けが施され
ディアブロ一族の中で、もっとも軽量な部類に入る。
その軽量なボディと、レーシングライクなエンジンは
F355からの乗り換えに、まったく躊躇を生まない
非常に魅力的な車だと言える。

「もう慣らしは終わったんですか!?」

「一昨日にね、秋田まで行ってきちゃった」

「秋田っ!?」

「雪乃に美味しいきりたんぽのある店の住所だけ聞いて、単身!」

「ほんとにですか?」

驚いた顔で苑森の方をみるキキョウ
キキョウも松籠の行動力には毎度、驚かされることが多々ある。

「そうみたい」

苑森はもう慣れっこだ。
"いつもの事よ"という顔をしている。

「ハイッ!ディアブロ乗ってみたいです!」

キキョウも名だたるスーパーカーとしてのディアブロには
興味がかきたてられるようで
松籠のよこで、手をピンッと上げ
助手席でのディアブロのティスティングを申し立てる。

「いいわよー、F355に比べてグッと戦闘力アップしたんだから」

「いか程に!?」

「雪乃のR33を軽く置いて行けるくらいに!」

「!」

「お姉様のR33を!?」

「聞き捨てならないわね、凛子」

「久々にヤル?」

「もちろん、何時でもライバルは凛子よ」

「決定!じゃぁいつもの時間ね」

キキョウは見逃さなかった、微かにうすら笑う苑森の表情を



「お姉様、なんか隠してる!」











『同時刻:和田峠』

春築の携帯電話から、本人が常々大好きだと謳う
シューティングゲームのゲームBGMが流れ
ワンフレーズのみ聞き、電話にでる。

「あい、もしもし」

『春築かー?』

電話の相手はどうやら高寺

「じゃなかったらどうする?」

『あ、違えました。失礼します。』

「だぁぁぁ!ちょ!ちょ!オレだよ!オレ!」

『オレオレ詐欺?』

「ごめん!からかってごめん!」

『それよりさ』

「くぬぬぬ・・・」

『今度の金曜、表ヤビツにストラトスっつーか
HFR2000が来るらしいんだよ』

「なんだって!?」

『いや、だからジパングGT宛に挑戦状が届いたワケ、そのHFR2000の主から』

「よし!さっそく記録に!」

『待て待て、でさ、なんか知ってることない?』

「知ってること?」

『俺達もなんも知らないんだよ、で、情報屋のお前ならって』

「それで電話ってコト?、確かに追ってはいるけど」

『そのとーり、なにか知ってたら教えてくれよ』

しばらく、考え込む春築
先日の情報収集のため偵察には行ったものの
特に詳しい情報は得られず、ギャラリー達も
どこの人間だかまったく解らないという様だった。

「それが、情報収集の真っ最中だし、なんとも言えないなァ」

『なんでも良いよ、音とか動きとか』

「そういやぁ、快音だったな」

『エグゾーストが?』

「そうそう、ありゃ6気筒だよ」

『6気筒?AER社製のモデルは4気筒だろ?』

「でも、あの音は6気筒だぞあの音は。」

『Tipo135CSを積んでるっての?』

「もしかしたらそうかもなぁー」

『わかった、サンキューな』

「んあっ?」

『どした?』

「いや、なんでもない」

『?』

電話を切り、ポケットへ携帯電話を滑り込ませ
春築は中断した、新しいビデオカメラの
車載搭載位置の検討作業へ戻る。

しかし、一旦考え始めると、なかなか作業が手に付かない

あの日、コーナー脇で捕らえたHFR2000の映像を
今一度、見直しても見直しても、エンジン音は
6気筒、しかし手元にある本家のストラトスとは
まったく音が違う。似ているようで、音が違う。
それに、微かに耳をかすり、闇に消えたブローオフバルブ音。
だが本当に微かで、耳を少々疑った。

「んー・・・」

悩んで映像をじーっとしゃがみ込んで見ていると
目の前に、赤いエボ7がブレーキを少々鳴かせキィーッと止まる。
ブレーキパットが良い仕事をしている音だ。

「春築、湿気た顔して何考え込んでんの?」

市原は、たびたび和田峠に遊びにくる。
春築との交友も、ふらっと市原が和田峠に遊びに行っていたことから。
今日も、軽く走るつもりで来たらしいが
春築がゴルフのリアハッチの後ろでしゃがんでいるのを見て
声をかけた次第だ。

「おっ、市原」

「今日、赤藤さんと、廣和君は居ないの?」

「赤藤は仕事、廣和はベルギー」

「ベルギー?何しに?」

「なんでも、ベルギー・ツーリングカー選手権絡みって言ってたな」

「え?参戦すんの?」

「今年はスポット、来年はルノーからフルのオファーが来てるらしくて」

「すげぇ・・」

「来年はヨーロッパ暮らしで、日本には中々帰ってこれないってさ」

やはりレーサーとしての一面がくっきり解る。
普段も中々、顔が出せないがこういう話を聞くと
レーサーの多忙さがよく解る。

「で、なに見てんの?」

「この前の、HFR2000の走行映像」

「あー、ありゃぁスゴかったなぁ、HFR2000でスカンジナビアンフリックだぜ?」

「あの突っ込みはな・・・」

「和田峠にでもくんの?」

「いや、ヤビツらしい」

「それで?」

「高寺が、なんか車体について情報しらないかーって」

「あーありゃ6A1型系だな」

「ぬぅっ!?なんつった?」

「なにって、あれ、6A1シリーズのなにかを積んでたなーって」

「それ、ホントか!」

「間違いねぇよ、あの感じは6A1シリーズ」

「なんでわかんの?」

「だってFTOは乗ったし、低速からの音がまるっきり似てたからな」

「なんつー新情報!」

「ターボならVR-4に載ってた6A13だろうな」

「え?お前も聞こえたの?」

「小さいけどな、ブローオフの音、したよな」

一気に6A1シリーズのエンジンを思い浮かべ
本家オリジナルのTipo135CSが2.4リッターNA
それを加味して、考える春築

「拘ってるとするなら、2.5Lの6A13か・・・合点があうな」

「オリジナルに?」

「きっとそうだ、オリジナルに近い排気量で、レプリカならではの
タービン装着やらスーチャー装着やら」

「んー、だろうなぁ、Gr.5のストラトスターボとかもあったしな」

「6A13ターボのセンで嗅ぎまわってみるか・・」




『首都高速:箱崎JCT向島6号線』

「今回の福島で縦置き化+軽いタービン追加作業、まで出来そうかな」

「縦置き・・・なんかブルッと武者震いしそうですよ」

「本格的なボディ補強はこちらに戻ってきてから、すなわちびっくりするほど
急激なパワーアップにはならないよ」

「でも、きっと動きもグッと変わりますよね」

「ハルデックス制御を丸ごと撤去し、デフを前後非対称トルク感応型へチェンジ
」

「マジのクワトロになるんですね・・」

「ハルデックス制御も歴としたクワトロですが、本当の意味で
そういうことをするのに適したクワトロであるのは周知の通りでしょう。」

両国をひた走るTT、今の横置きハルデックス制御も今週いっぱい
週が明ければ、TTは駆動系の類いがバラされ、エンジンも
各種パーツを転用し、すべてが終わると縦置きターボ化となっている。

今回のフェーズステップアップで、プライベーターとは思えない量の
パーツの加工や組みつけ、そして駆動系からエンジンのほとんどを
焼き直さなければならない大手術もいい所で
成功は大前提だが、机上での計画である以上
絶対的な速さが得られないかもしれないというリスクも残っている。

しかし、現在のパワートレイン系では限界が明白に見えており
それを撤廃する意味でも、飛び越す意味でも
縦置き化が重要なファクターになってくるのである。

TTの後ろに続くキャラバンの車内
ラインハルトの携帯電話から着信音が流れる。
手際良くヘッドセットとイヤホンを装備すると
ブルートゥース機能で安全に通話を開始

「もしもし?」

「ハルトさん?今ヘイキ?」

「大丈夫だ」

「注文してたエアロ、試作品ができたケド」

「あー、わかった明後日あたりに確認に向かわせる」

「福島からとんぼ返りカイ?」

「ウチの鉄の魔女とルーキーを向かわせるよ」

「おっ!噂のルーキーくんにお目にかかれるってわけダナ!」

「アルバートリック社製のトレイウィングは届いた?」

「バッチリさね、精度も中々でいいカンジ」

「ってことはエクステリアに関しては揃ったって訳だな」

「こっちはいつでもOKヨ」

「フィッティングはお前が頼りだからな、白川」

「任せといてってー、俺にかかれば何でもくっつけてやるってノ」

語尾に特徴的なイントネーションを混ぜる電話先の白川という男と
エクステリアについて手短に話を終えるラインハルト
ボディ補強のプロも、エアロのフィッティングは別に利き腕を知ってるのか
ラインハルトが頼んだ様子。
ラインハルトが頼む以上、かなりの仕事をする男であるはずだ。

ポッとTTのテールランプがヘッドライトに連動し、点灯する。
ラインハルトが車内の時計を見ると、まだ3時

「もうヘッドライトつけるのか」

辺りはまだ太陽が降り注ぎ、明るいが
玄白は「夕」と判断したのだろう、所謂デイライトオンを
自己流の時間で点灯させているらしい。

「俺も点けるか」

キャラバンもTTを見習い、ヘッドライトがパッと道路を照らす。




それぞれに思い思いの昼下がりは、逃げる様に夜へ入れ替わる。
活性化するエンジン達、まるで夕闇を待ち焦がれたモンスターの様






第十五章

『湾岸線:東行き・臨海副都心トンネル』

ゴファッ・・ッ!

時計は深夜の2時を指し、彼女らのいつもの時間
台場11号線から、湾岸線へ飛び出した勢いそのままに
メーターの針は、一気に250km/hを超えていく

先行するR33、追随するディアブロ
R33の加速の伸びが尋常じゃないくらい、良い走りを見せる。

「えええ!」

ディアブロの車内で思わず松籠は動揺してしまう
それは助手席に同乗するキキョウも同じで
苑森のR33が桁外れの速さを見せている事に起因する。

グルリと回ってきたC1から、少し様子が違うと思っていたらこれだ

R33の車内には、ドグミッション特有の音が鳴り響き
スパーギアの存在感が格段に際立っている。

無言でバックミラーを見ると、躊躇いなくアクセルを踏みつけたまま
ディアブロを引き離しにかかる苑森

ライターとしての傍ら、結構な数のチューニングカーに乗ってきたこともあり
自己流のエボリューションモデルと、謳っても良い様なデキのR33を
苑森は、一部のスキも無く乗りこなす。




「うおっ・・・!すっげなんだあれ!」

「R33とディアブロ!?」



首都高を闊歩する、なんちゃって組の横をエラい勢いでパス
250km/h付近での走行で、あっという間に羽田までを走りぬけ
夜空を航行するジャンボジェットを尻目に、川崎埠頭料金所へ備え
クールダウンと相移行する。

高速走行時は閉じていたリトラクタブルヘッドライトを開け
R33にパッシングすると、すかさず横へ並び
"まいった"のジェスチャーをする松籠



「なんちゅー速さなのよ・・・」

窓越しにはピースなんぞしている苑森が居る。

(さっきの含み笑いはこれだったのか・・・ッ!)

キキョウも苑森の上を行く行動に、驚嘆の意を示す他ない。





『常磐道:下り・中郷SA』

時間は少々遡り、空に月が薄っすらと確認できる時間
常磐道の下り、中郷SAに到着
駐車場区画の一番、隅っこにTTとキャラバンを停め
車から降りると、3人同時に伸びをする。

「あぁぁぁ・・・!ふぃー」

気持ち良さそうな声を上げながら、伸びをする玄白
SAではよくある光景だ。

「あー疲れた、流石に淡々と走ってもキツイな」

「でも、淡々と走った方が結果的には早いものですよ」

「徹三は、よく平気で名古屋とかまで行っちまうよなぁ」

「無駄に休憩しないだけですよ、ストレッチ程度で十分」

「そんなことより、出迎えの白いFCってどこだろうな?」

ラインハルトは駐車場をキョロキョロし、話に聞いた白いFCを探す。
玄白も横でキョロキョロとするが
プリウス、ヴェルファイア、ステップワゴン、中型トラック、大型トラック
フィット、ノート、エスティマ、セレナ、LS640、ボイジャー

見渡す限り、FCの様な流麗とした車は一台も見当たらない。

「まだ来てないんですかね?」

玄白が、キョロキョロしつつ、未到着の仮説を提唱すると

「どうやら物陰に居た様ですね」

マスターが指さす先には、ミニバンが出庫するのと同時に
フロントが見えた白いFC、ヘッドライトが埋め込みの固定式に変更されている。

FCの発見と同時に、背後から声が掛る。

「あのー」

クルっと振り向くと、まだ18〜19歳だろうか
幼い面影の青年が立っていた。

「君は・・今沢君ですね?」

マスターが、青年の名前を直接、本人に尋ねる。

「あ、ハイ、そうです。石川さんの手伝いで、迎えに上がりました。」

「じゃぁ、あのFCは君の?」

ラインハルトが、FCを指さしながら続いて問う

「え、あっ、え?」

西洋人そのままを地で行くラインハルトの口から
自分たちと大差ない、流暢な日本語が飛び出たことに
今沢は、少し驚き、たじろいでいる。

「あーごめんごめん、大丈夫、日本語でオッケー」

「りゅ、流暢なんですね」

笑い飛ばしながら、今沢の中に芽生えたギャップを取り払うラインハルト
ラインハルトにとっては、いつものことだ。

「はじめまして、私が石川の旧友。このドイツ人が、ラインハルト
そしてこっちが、玄白」

「よろしくな、FCの青年」

「よろしくッ、玄白って呼んでよ。」

今沢は歳の頃で行けば、確実に玄白より若い
玄白も想像していた人物と、少し年齢が大きく外れたことで
少し、安堵というか親しみを覚える。

マスターとラインハルトがトイレと、少々の買い物をしている間に
今沢となんちゃない雑談をする、歳が近いせいか
話題には事欠かない、その上、TTに興味を抱いているようだ。





「ちょっと、トイレいってくるな」

ラインハルトがトイレに離れると、マスターも次いで
飲み物の購入に、玄白と今沢の元を離れる。

駐車場に残った二人はなにをするわけでもない
しかし、玄白は慣れた手つきでTTのボンネットを開ける。

「?熱、こもりやすいの?」

「いや、新鮮な空気にあてるっていうか」

「呼吸してるわけでもないのに?」

「なんていうか、好きなんだ。エンジンを見てるのって」

TTのエンジンルームは綺麗なパイピングや、強固そうなタワーバーが目を惹く
当然、走りを嗜む一端の人間である今沢も、凝視してしまう。

「すごっ・・・」

「ボンネット開けると、話題にも困らないしね」

「あ、なるほど」

「お、エンジン観賞会かー」

トイレに向かったラインハルトが、ハンカチで手を拭きつつ戻ってくる。

「エンジンも良いが、ボディや足は、俺の仕事だぞー」

「乗らなきゃ解りませんよ」

玄白が冗談交じりの笑いでうけ答える。

「さ、徹三が戻ってきたら出発だ、ボソボソしてらんねーからな」

「じゃぁ、FC持ってきちゃいますね」

FCを取りに行く今沢と入れ替わる感じでマスターが戻ってくる
まるで光の入射角と反射角の関係みたいだ。

「あれ?」

今沢の姿が見えないことにキョロキョロするマスター

「FC取りに行きましたよ」

FCの方に目線をやると、ロータリーサウンドが耳を待たせることなく
鼓膜をゆらしてくれる。
低速時特有のロータリーサウンド、白いFCはRE雨宮製のエアロを装着している。
その姿は21世紀の世に少々古さを感じさせるが、懐かしくもある。

「固定式ヘッドライトか、昔は流行ったもんだな」

ラインハルトが妙に懐かしむ、玄白は度々ドイツ人かどうか疑わしく思う

「それじゃ、私達も出発しましょう」

「はいっ」

「あいよ」

三台連なり、中郷SAを出ていく
先頭には今沢のFC、玄白のTT、ラインハルトのキャラバン
FCのチューニングカーらしい動きは、当然というか様になる。
少々のハイペースでの高速走行、V6サウンドに割入る
ロータリーサウンドが、耳に新しい

勝手知ったるルートなのだろう、FCはハイペースさを増して行く
TTを引っ張りながら踏み込むアクセル
メーターはもう150km/hを常時オーバー
左、中央のそれぞれの車線を走る車をあっという間に
ミラーの後方へと置いていく

「ちょ!待て!キャラバンじゃ150km/hから上怖いって!」




―むしろ150km/hが限界だからー!


―Jeez....!
(ったくよォ・・・!)












すっかり日が姿を潜め、世の中の一般家庭では
バラエティ番組によってヘソで茶を沸かしてるであろう時間
光の漏れる工場の前に、待ち切れず立つ石川
その後ろに、如何にも走り屋コゾーという風体の青年が二人いる。
工場の前に並ぶ車はそれぞれCA4Aミラージュと後期の180SX

「今沢先輩、まだなんスかね?」

ワンエティの前でマイルドセブンの箱から、タバコを一本取り出し
慣れた手つきで火をつけ、ガソリン以上の税金塊を燻らす。

「新谷、タバコやめたんじゃなかったのかァ」

「へへッ、無理っした」

石川の後ろで、よくある禁煙失敗談をする二人

「榊里先輩は、もう吸わないんスか?」

「オレはきっぱり辞めた、煙草代はミラゲに突っ込む」

どこかいまどきの言葉遣いだが、どうしてもイントネーションは福島色だ。

「おぉ!来た!!」

パンッと手を叩き、待ってましたと姿を現した三台の車を迎える石川

石川の前にTTが止まり、助手席のウィンドウが降りる。

「徹三さん・・・」

「久々・・・だな、石川」

「お互い、ジジイになったもんですな・・」

「おーい!シン坊!なんかケーキの類い買ってこー!」

マスターとの再会にしんみりするのもそこそこに
ワンエティの新谷に樋口一葉を一枚投げ
ケーキを買ってくることを命ずる石川

「コーヒーさお願えできます?」

「喜んで」

「シン坊!お釣り余ったらタバコ一箱買っていいぞ」

「マジで!?行ってくる!」

顔の渋りが瞬時に消え、ワンエティに飛び乗る新谷


「ラインハルトさんも、久々で」

「あぁ、元気そうでなによりだ」

オヤジ達が再会を懐かしむ一方で、玄白は今沢から
榊原の紹介を受ける。

「コイツは榊原、俺の幼馴染でチームメイトって感じかな」

「はじめまして、榊原って言います。」

「よろしく、玄白って呼んでね」

「で、今ワンエイティで遣いに行ったのが新谷、一個したの後輩」

「チーム名とかあるの?」

「ま、まぁ一応あるよ、アブクマーレって言うんだけどね」

少々恥ずかしそうに答える今沢、なんだか対比的に玄白が大人に見える。

「阿武隈山脈からって感じ?」

「おっ!解る!?いやぁ嬉しいなぁ」

そのリアクションから見ると、中々理解してもらえないといった雰囲気で
玄白が由来をビシッと当てたことで、彼らの玄白に対する好感度は
一気に上昇したのであった。


「あ、そうだ玄白」

ラインハルトが昔話から抜け出し、玄白を呼ぶ

「明後日に朝一発目のスーパーひたちで町田駅に行ってくれ」

「えっ?」

「そこでアビーと合流して、TTの新エアロの確認ってわけだ」

「本当ですか!」

「明日はゆっくりして、明後日確認、そのまま家に帰っても良いぞ」

「あー有給、一週間取っちゃいまして・・・」

「おいおーい、バカンス気分全開だな」

「まぁ・・ワクワクが止まらなくて」

「そういやぁ、玄白って何の仕事してるんだ?」

「あ、学芸員です。」

「学芸員!?博物館で勤めてるのか、分野は?」

「地質系ですね」

意外な職種が判明したところで、早速タバコを一箱片手に
ワンエイティが帰って来た。

そのあとは車の話や、昔話に花が咲く
若い衆も一緒に車のいろはを語り、町工場には
夜遅くまで光と笑いが灯った。





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縦置きターボ化開始
現実世界ではまず無理!(笑)